『ウマ娘』立て直しの功労者として及川啓監督、杉浦理史氏、そして伊藤隼之介Pの名を刻もう

どうもはじめまして、id:Junchangchangです。普段は増田でウマ娘の記事を書き散らしていますが、このエントリは顕名の方がいいだろうということではてなブログ始めました(はてダから数えて18年ぶり2度目)。

ちなみに競馬は見始めて25年、現役の推し馬は門別から中央入りしたビゾンテノブファロくんで、ダリア賞を皮切りに主にオープンで使われ続け、3歳の3月にして既に13戦! という条件馬あるあるなローテーションをたどりながらも(レース選択の上手さもあって)毎度賞金をくわえて帰る馬主孝行なところに胸打たれながらその活躍を見守っています。出馬表に名前を見つける度ここで勝ってお休みゲットや! と祈らずにはいられませし、無事是名馬として競走生活を終え乗馬などのお仕事で馬生を全うできることを心から願っています(ちなみにきゅるーんとした外見のめちゃくちゃ可愛いお馬さんです→https://cdn.netkeiba.com/img.db/v1.1/show_photo.php?horse_id=2018102961&no=8786&tn=&tmp=no
でまあウマ娘の話なんですが、こんな記事を読みました。



アプリリリースまで紆余曲折があったウマ娘の歴史を振り返る記事で、起筆がプロジェクト発表会となっており、最初は好意的に読んでいたのですが、途中から悪意を感じるようになり、後半には思い込みだろうと思われる部分もあったので批判記事を書くことにしました(挨拶終了なので以下からである調)。

ウマ娘の転換点となったのは『シングレ』ではなくアニメ1期

決定的な転換点「シンデレラグレイ」の制作
(中略)
「シンデレラグレイ」は紛れもないスポ根モノであり、あと漫画が上手い。TVアニメ版を踏まえて……なのか、満を持しての覇権コンテンツがついにウマ娘に登場した

と、元記事にある。
なんでここまで分かっててアニメ1期が転換点になったと思わないんだろう……?(アニメは見ていないようだがそれでも状況は理解してるっぽいし)
競馬モノなのかアイドルモノなのか判然としなかった『ウマ娘』が現在の形にまとまったのは、アニメ1期を経てからというのが衆目の一致するところだろう。
この辺はPVの変遷からも伺える。

2016年のプロジェクト発表と同時に披露されたプロモーションムービー


プロジェクト発表と同時に披露されたこのPVは「このプロジェクトを立ち上げたのは誰だぁっ!」とブチギレてしまう内容。
映像のレースは日本ダービーなわけだが、このPVの作った人はその重みが一ミリも理解できていない。いま日本では毎年約7000頭サラブレッドが生産されているが、その頂点を決めるレースこそ日本ダービーであり、日本のホースマンが目指しているのは天皇賞でもジャパンカップでも有馬記念でもなく日本ダービーなのだ。競馬界はそれが行われる5月末が年度末であり、6月から新しい1年が始まるとさえ言う(6月から2歳馬がデビューし、翌年5月末の日本ダービーを目指す)。出走する18頭に入るだけでも大変な栄誉とされるのに、皆おちゃらけた感じで走ってて、そのうえ前の馬(ウマ娘)に抱きつこうとしてる奴がいるとかお前ホンマ……(怒)。
それがこのPVを初めて見た私の偽らざる感情だ。ウマ娘ファンの前に競馬ファンなもんでね(ただしうまぴょいはなんかいいな、とこの時点で好印象)。

2017年3月のゲームトレーラー


少なくともレースは真面目に走っており、印象はだいぶ改善された。ただし直線の映像でスズカが内ラチ沿いを逃げていなかったり、スペがイン突きしてたりするのはどういうレース展開を想定してるんだろう、とモヤってしまったのも事実。競馬モノとしてはまだ甘い。ウイニングライブもその存在意義がよく分からず、競馬がやりたいのかアイドルがやりたいのかハッキリせーや感は拭えない。

2017年7月のアニメPV第1弾


映像クオリティはともかくキャラデザなどは今と同じものになってきた。が、まだどこか違和感がある(それはアニメPV第2弾と比較してあきらかになった)。

2017年12月のアニメPV第2弾


ここでようやく今の形になった。7月と12月のPVはまったくの別物である。改善されたとかいう次元ではなく、まったく別のコンテンツになったとさえ言っていい。
どこをもってそう感じるのだろうか?
1つは走り方である。PV1の走り方はその全てが「お遊戯」ように見える。女の子走りをするグラスはもとより、ラストのトレーニングをしているスペでさえ遊んでいるといったほうがいい(腕を流しながら走るトレーニングなどありえない)。
これがPV2になるとフォーム、スピード感、そして何よりレースに懸ける想いが表情に出て、その全てが「アスリート」になる。グー握りしながら走るスペが出てくるが、この握りやフォームは成長過程という演出であり、皐月賞に出るころには改善される。
つまり、ともすればトレセンで女の子たちがキャッキャウフフする日常モノにも見えるPV1から、スポ根モノのPV2への変貌が見て取れるのだ。
この手の変化はもうひとつ観測できる。PV1のスペは足を引っ掛けて転んだり、トレーニングに失敗したりする。これらのシーンにはコメディとしての味付け以上の意味はない。このトレーニング失敗は3月のゲームトレーラーでも描かれていて、作り手がそういう意識なんだな、と感じる。これがアニメ1期を経ると全くの別物になる。
いやいやアニメ1期にはギャグのセンスに定評がある及川啓監督がその才を遺憾なく発揮して『ヒナまつり』を彷彿とさせるギャグシーンが大量にあったじゃないか、というツッコミが入るかもしれない。しかしそれでも違うのである。例えば以下のシーン。

前を走るゴルシが蹴り上げた土が目に入って悶絶するダイワスカーレット。言うまでもなくギャグシーンであり、これはアプリにも輸入されている。

これは追い切り中にウッドチップが目に入って怪我をしたダイワスカーレットの逸話に由来する。つまり元ネタがある。意味なく転ぶのと、元ネタがあって転ぶのとでは話がまったく違う。他にもスペの太ももを無断で触って馬の尻っ跳ねのように蹴られるトレーナーや、オグリの大食いや、撮影フラッシュに驚くエアグルーヴなどなどなどアニメウマ娘に仕込まれた競馬ネタは枚挙に暇がない。これもPV1からPV2(というよりはアニメ本編)への間に発生した大きな変化だろう。
日常モノ? からスポ根モノへ。ただのコメディシーンから競馬の逸話を元ネタにしたギャグシーンへ。この変化をもたらしたのは一体誰だろうか? アニメ1期2期ともに監督を務める及川啓氏、シリーズ構成を担当した杉浦理史氏。このふたりの尽力も大いにあるだろう。ウマ娘は時間をかけて練り上げられたコンテンツだ。外からはわからないがきっと多くのスタッフの貢献によって実を結んだ変化でもあるだろう。しかしそれでも、とりわけ貢献大だろうと思われるのがアニメ1期ではプロデューサーを、『シンデレラグレイ』では企画構成を務める伊藤隼之介プロデューサーである。この伊藤Pは私のような若輩者は裸足で逃げ出すレベルの競馬ファンであり、その博覧強記ぶりは尋常でない(興味がある人は氏のTwitterやnoteを見てみるといいだろう。ついでに言えば1期放映時アニメウマ娘Twitter公式アカウントをいとう名義で更新し、競馬に関する様々な情報発信をしていたのも彼である)。
その貢献はアニメ1期後に出たインタビューでも語られている。

石原さんが「もし伊藤さんがいなかったらアニメは成立しなかった」と語るTOHO animationのプロデューサー・伊藤隼之介
https://kai-you.net/article/54553

伊藤「アニメ『ウマ娘』に最初に触れる競馬ファンという役回りでしたので、自分自身のアイデアもそうですが、その方向性で競馬ファンが喜んでくれるのかジャッジに関しては任されていたように思います」
石原「伊藤さんからOKをもらえればきっと競馬ファンの方には怒られないかな……と」
https://tokyo.whatsin.jp/234846

アニメ1期でウマ娘にハマったファンから伊藤Pの存在はしっかり認知されており(https://xn--o9j0bk9l4k169rk1cxv4aci7a739c.com/?s=%E4%BC%8A%E8%97%A4P)、そういうファンから伊藤Pの存在が好意的に受け止められているのは、ウマ娘というコンテンツが、競馬や競馬の見せる夢をリスペクトしたスポ根モノへと変化したことに関して伊藤Pの貢献大なりと皆が思っているからだろう(てか『シングレ』にハマってるんだったら企画構成として名を連ねる伊藤隼之介って誰やねんってならんのか>元記事のブログ主)。

トウカイテイオーの楽曲『恋はダービー☆』に関する誤読はもっとひどい。あるいは悪意さえ感じるレベル

もうひとつ思いっきりツッコんでおきたいのがトウカイテイオーの楽曲『恋はダービー☆』に関する誤読である。
元記事のブログ主は歌詞の冒頭を引用し、以下のように述べる。

まっすぐな目で こっち見ないで
かわせない 逃げれない
こんな時 どうすんの?
恋の経験値 ギミギミギミ!
 
はい……。トウカイテイオーといえば、無敗で皐月賞ダービーを制し二冠を達成した名馬ですね。怪我で三冠達成を逃した後に、復帰してJCを勝利、その後また怪我で長期休養の後に1年振りの出走となった有馬記念で劇的な勝利。「かわせない」で悩むことはなかったし「逃げれない」こともなかった馬ですね。作詞者の方、ウィキペディアくらいは見ましたか? この歌詞でOKした責任者の方、競馬ってご存知ですか?

では次に歌詞の全文を確認してきてほしい。
https://music.oricon.co.jp/php/lyrics/LyricsDisp.php?music=5513674
歌詞に出てくる「かわせない 逃げれない」はレースについての歌詞だと思った人はいるだろうか? おそらくはいないと思う。「かわせない 逃げれない」のは恋から、である。かけっこが得意なテイオーはしかしその一方で「恋の経験値」が低すぎるから「かわせない 逃げれない」のである。だから「恋の経験値 ギミギミギミギミ!」なのだ。そしてそんな恋の相手である「キミ」はテイオーから見て「かけっこ」は「並だし」と語られる。テイオーが尊敬するカイチョーはかけっこ最強であり、まだまだ幼いテイオーの価値基準は基本そこに置かれる。しかし「並」でしかないはずの「キミ」にテイオーは恋をしてしまっている。そしてそんな恋は「ダービー」のようで「お祭り騒ぎだ」と語られる。『恋はダービー☆』はテイオーの幼い恋心を歌ったラブソングなのである。
こんなことは歌詞を一読すれば誰だってわかることで、いちいち説明する必要なんてない。しかし元記事ではテイオーのレースについて歌った曲であるかのように切り取られている。これに悪意を見出してしまうのは、ハンロンの剃刀だろうか?(ついでに言うと歌詞の「Step it!」はテイオーステップが元ネタで、アニメ1期の3話でテイオーがこの曲を歌いながらテイオーステップを披露する。元記事の「テイオーのwikipediaぐらい見て来い」という指摘は全くの的外れというわけだ)

その他の要素について

ちなみに元記事では『STARTING GATE』の売上が振るわなかったことが執拗に指摘され、その流れで『恋はダービー☆』がDISられている。もし『恋はダービー☆』が競馬ファン納得の出来だったら売上は上がっただろうか? まずそんなことにはならないだろう。売上と楽曲の質はそう簡単に連動しないし、そもそも同列に並べることでもない。
私は、アニメ2期とアプリのメインストーリー2章、育成モードのシナリオを通じてライスの楽曲である『ささやかな祈り』が好きになった。一生、心に残るくらいに。そしてメインストーリー2章のラストを通じてウイニングライブってやっぱいらないんじゃね教から絶対いる教に宗旨変えした。それはたとえこの曲の売上が振るわなくても変わることがない。そりゃ商売でやってるんだから売れた方がいいに決まってる。しかし売れる売れないに関わらず大事なことはあるはずだ。
また、初期にイラストと声優だけ発表されてお蔵入りしたウマ娘について何ら発表がないことも不満のようだが、まだOKをもらってなかったからこそ馬名を明らかにしていなかったわけで、名前が出ていない以上、何かを釈明する必要があるとは思えない。
ちなみにノーザンファームがどうたらとか書いてるけど、状況的に見て直系のクラブ馬が出てきてなくてアドマイヤベガサトノダイヤモンドが出てる以上、社台からはNGが出て、権利半持ちの馬はオーナー側からOKが出た、ついでに言えば金子氏には断られたと見ていればおおよそ間違いないだろう。競馬ファンならこれぐらいのこと察せるし、ウマ娘から競馬に入った人は気にしないだろう。それを何かキナ臭い話があったかのように焚きつけるのはいかがなものかと思う(むしろサイゲが手順を踏んでるから起きてること)。
ていうか、ここまで書かずに我慢してきたけど、元記事のブログ主、石原章弘氏が嫌いなだけじゃないの?
言いたいことは言ったのでこの辺りにしておくが、海の物とも山の物ともつかなかった初期『ウマ娘』からこれだけの大ヒット作に変貌したのは、アニメ1期が転換点になったからで、そのアニメ1期に尽力した及川啓監督、杉浦理史氏、そして伊藤隼之介Pは改めて個人的に称えておきたいし、その功績をより多くの人に知ってもらいたいと思う。
ちなみにアニメ2期は1期を凌ぐデキ(まさに叩き2走目感ある)で、今11話と佳境なので見てないって人はマジで見てくれ(アマプラで全話視聴できる。2話、8話、10話でボロ泣きした。特に10話)。アニメウマ娘はいいぞ!
 
※うっかり消してしまったので再投稿
初回投稿:2021/03/16 21:29
最終更新:2021/03/17 13:20(タイトルに敬称追加)